仮性近視とは
仮性近視とは別名偽近視ともいわれるもので、文字通り「ニセ」の近視のことをいいます。近視の主流である軸性近視は、もちろん正真正銘の近視です。また,屈折性近視の中でもその原因がはっきりしていて、それが本物の近視である限り、仮性近視とは呼べません。
一般の人達はもちろん、業者の中にも屈折性近視全部を、漠然と仮性近視という人が多いのですが、これは決して正しくないのです。まず、この点をはっきり区別しておいていただきたいと思います。
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仮性近視とは、あくまでも一時的な近視であるべきですし、治る近視であるべきです。
それゆえ、仮性近視を文字通り解釈すれば、本来近視ではない眼が何らかの理由によって「一時的に近視の屈折状態になったもの」といえます。
ところが、最近、仮性近視という言葉の意味が少し変わってきて、話しがややこしくなってきたように思われます。
たとえば、学生などの青少年が、毎日毎日読書や勉強を続けていると、このために近くのものばかり見ていることになり、調節の考え方からすると、毛様体筋の収縮も連続的になります。
これは、毛様体筋の緊張が休まるヒマがないという意味になりますし、その結果、毛様体筋が痙攣したり、肥大したりして、いざ元に戻ろうと思っても、完全な調節休止の状態になってくれません。従って、水晶体の屈折度はいくらか強い状態のままで残ってしまい、遠くを見ようとしても正視の屈折にならず視力障害を起こすというのです。
若い人は調節力が多いですし、また、そのような年齢の人はちょうど学校へ行って強勉する年頃ですから、このような現象があり得るだろうということは一応うなずけます。
この説を主張する学者が根拠とすることは、次のような統計があるからです。
それは、近視になる人の分布が都会に多く田舎に少ないこと、文明国に多く来開国に少ないこと、更に、戦争前に学生の近視が多かったのに学徒動員などで勉強ができなくなった戦時中は少なくなり、戦後再び入試地獄といわれるようになってから急にまた近視が増加したことなどを、読書(近業)に結びつけているのです。そして、このような起こり方をする近視のことを、学校近視という呼び方をすることもあります。しかし、この言葉は、少しアイマイないい方です。
いずれにしても、最近、仮性近視というと、このような起こり方をする近視を指すことが多くなりましたし、いつの間にか学生に多い弱度の近視は、すべてこのような近視だというような風潮になってしまったようです。
しかしながら、このような考え方に対しては、もちろん反対論もあります。
それは、連続的近業が、毛様体の痙攣を誘発し、それがいわゆる仮性近視の原因になるのであれば、物理的・薬物的療法でこの痙攣を取ってやれば、当然治療することができる筈です。それなのに、その効果はあまり認められないではないか?というのです。
アトロピン点眼による毛様体筋麻痺法で試みた治療成績は、点眼直後と点眼中止後2週間のデーターに関する限りは一見有効(但し全治している訳ではない)に見えるが、点眼中止後2ヵ月目には再び初診時の度数に逆戻りしているという結果を得ています。そして、研究対象100眼のうちたった1眼のみが、たしかに実験の成果があっただけという結果が出たのです。
従って、調節の痙攣による「仮性」の近視というものは、世の中で騒がれているほどには決して多くなく、その大半は「本物」の近視のごく初期のものだという見方が成り立つというのです。
もちろん、100眼中たった1眼であっても、とにかく効果の認められた眼があるのですから、治療を試みること自体が全く無意味だという訳ではないようです。
ただ、治る見込みもないのに、長い期間、無駄な労力やコストを浪費して治療を続けたり、最初から駄目だと思われる中等以上の近視にも治療を行なったりして、「近視が治る」という浪い期待の代償に、メガネ装用の機会をみすみす遅らせることが、果たして良い判断かどうかを考える必要があるのではないか?ということはいえると思います。
このように、仮性近視というものが、本来の考え方から、段々学生の弱度近視だけを問題にするようになってきたことは、少しばかり本質を外れているように思えます。むしろ、仮性近視はあくまでも仮性近視、学生の弱度近視は、仮性近視を含む青少年の弱度近視というように、はっきり区別する必要があるのではないでしょうか。
いずれにしても、仮性近視というものの定義を含めて、若い人達に見られる弱度の近視に関しては、学者の間でも見解がまちまちなのが現状です。
しかもいまのところ、これといった明確な決め手が掴めていないのです。
それゆえ、これ以上断定的な説明をすることは不可能です。業界におかれても、仮性近視に関する軽々しい発言は控えていただくのが賢明だと思います。

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